ドキュメンタリー映画『紅花の守人(もりびと)』公式サイト
9/3(土)ポレポレ東中野にて
ロードショー全国順次公開
第七藝術劇場、京都シネマ、別府ブルーバード劇場、ガーデンズシネマにて公開決定!

イントロダクション

あやしき紅に魅せられた
紅花の守人たちが
織りなす奇跡の物語

室町時代に中近東からシルクロードを経て伝わってきた紅花。皇室で珍重されたその色は、第二次世界大戦中に国によって栽培を禁止され、戦後は安価な化学染料の台頭によって、継承の危機に瀕していた。しかし誰に頼まれるでもなく、山形の小さな農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、今では世界的な農業遺産として注目され始めている。
手間暇を惜しまず栽培して生まれた紅の染料からは、極くわずかな紅色しかとれない。利便性から遠く離れた紅花文化を、慈しみながら守り継ぐ人々の姿を4年の歳月をかけて記録した映画『紅花の守人』が、ついに完成した。
ナレーションは映画『おもひでぽろぽろ』でタエ子役の声を担当した、歌手で女優の今井美樹が参加している。監督は『世界一と言われた映画館』など、山形を舞台に数々の映画作品を発表している佐藤広一。
化学染料では生み出すことのできない繊細な色あいを表現するため、昼夜を問わず染めに没頭する守人たちが色彩巡礼の旅へ誘う。

予告編

スタッフ

ナレーション:今井美樹(いまい・みき)

1986年シングル「黄昏のモノローグ」で歌手デビュー。CM・ドラマ・映画等、活動の幅を広げながら、「瞳がほほえむから」「PIECE OF MY WISH」「PRIDE」など数々の大ヒット曲を発表。等身大の歌詞と透明感溢れる歌声で男女問わず幅広い層に支持される。
2012年英国移住。2018年にはオリジナルアルバム「sky」を発表し全国ツアー開催。2020年秋タイムレスなセルフカバーアルバム「Classic Ivory 35th Anniversary ORCHESTRAL BEST」をリリース。同時にコロナ禍で一度延期となった35周年記念コンサートを会場お客様50%という制約の中奇跡的に開催。今年7月にはこのコンサートのアンコール公演も行うことができ、世代を超えた幅広い人気は健在。2021年6月に公開された映画「名も無い日」にも出演している。1991年公開の映画「おもひでぽろぽろ」では、主人公・タエ子役の声優で参加。
オフィシャルHP:www.imai-miki.net

30年前、タエ子ちゃんと一緒に出会った紅花。
あの時、美しい紅が丁寧に愛情いっぱいに注がれて生まれることに
私はとても感動したのでした。

あれから30年経ち、再び紅花と再会することになりました。
記憶の中の懐かしい光景が、今現在も、手をかけて愛を持って
紅花を守り続けていらっしゃる皆さんの姿と重なりました。

はるか昔、長い旅をして辿り着いた紅花のストーリー。
人々がなぜ紅花に魅了されるのか、あの美しい紅の虜になるのか。
紅花を守り、その歴史を紡ぎ続ける方々のまっすぐな姿がそれを教えてくれます。
伝統が引き継がれて現れる、美しい紅に秘められた物語です。

今井美樹

唄:朝倉さや(あさくら・さや)

1992年6月29日山形県生まれ。民謡日本一に二度輝き上京。2013年、誰もがもつふるさとへの愛情、想いをしたためた泣き歌、自身の作詞・ 作曲による「東京」でデビュー。週間 USEN HIT インディーズランキングでは初登場2位、 翌週には1位を記録したほか、amazon mp3 歌謡曲ベストセラーランキンク1位、オリコンランキングなど続々とチャートインした。20年ユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。 YouTube 再生回数合計3500万回突破。15年にはアルバム『River Boat Song-Future Trax』 にて日本レコード大賞企画賞、21年にはCDショップ大賞歌謡曲賞を受賞。歌の力で常識を塗り変え、感動を届ける、唯一無二の存在。失われた日本民謡文化の復活にも邁進中。
オフィシャルHP:www.asakurasaya.com

監督:佐藤 広一(さとう・こういち)

1977年山形県出身。1998年、第20回 東京ビデオフェスティバル(日本ビクター主催)にて、短編映画「たなご日和」でゴールド賞を受賞。
監督作に「隠し砦の鉄平君」(06年)、WEBドラマ「まちのひかり チェーズーベー」(20年)主演:庄司芽生(東京女子流)がある。
ドキュメンタリー映画「無音の叫び声」(16年/原村政樹監督)、「おだやかな革命」(17年/渡辺智史監督)、「YUKIGUNI」(18年/同)では撮影を担当。
監督作「世界一と言われた映画館」(ナレーション:大杉漣/プロデューサー:髙橋卓也)が2019年に全国公開。
公開待機作品に、映画「丸八やたら漬 Komian」(2021年/ナレーション:田中麗奈/プロデューサー:同)がある。

プロデューサー:髙橋卓也 (たかはし・たくや)

1956年生まれ、山形市在住。市民出資の映画館、フォーラムの 第1号社員として上映企画や営業に従事し、山形県映画センターでは映画館のない地域での上映企画や配給活動を20年以上にわたり行う。89年の第1回の立ち上げから関わった山形国際ドキュメンタリー映画祭では2007年から事務局長、18年から理事兼プロジェ クト・マネージャーを務める。プロデュースした映画作品に『よみがえりのレシピ』『無音の叫び声』『世界一と言われた映画館』『丸八やたら漬 komian 』などがある。

音楽:小関 佳宏(こせき・よしひろ)

クラシックギター奏者、作・編曲家。クラシックギターを基本とし、様々な共演者と共に国内外で演奏を展開。ギター曲を中心に他楽器との室内楽の作曲、映画や舞台、CMの音楽を手掛ける他、これまでに9枚のアルバムをリリース。編曲家としても高く評価され、村治佳織をはじめ多くのギタリストから編曲作品の委嘱を受ける。代表作の『ギターソロ曲集・久石譲』のほか、編曲を担当した楽譜も多数出版されている。 *演奏=小関佳宏、佐藤正隆(ギター)/駒込綾、佐藤実治(バイオリン)

録音・整音:半田 和巳 (はんだ・かずみ)

TV-CM、ラジオCM、各種BGM等のサウンドディレクションを手がけるほか、ドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』サウンドトラック、『世界一と言われた映画館』等、映画関係のMAにも携わる。また山形国際ドキュメンタリー映画祭2017へのプロデュース楽曲の提供を行う。山形県内のアーティストを中心にレコーディングを数多く手がける傍ら、山形県大江町での野外音楽フェス「CBJAM」を主催。県内の様々な野外音楽フェスにも運営協力を行い、幅広いアーティストとの親交を深めている。サウンドレコーディング技術認定Aランク所持。

出演者

その老いた人の赤い手 ―映画『紅花の守人』への思い

長瀬 正美・長瀬 ひろこ

その老いた一人の男と出会ったのは、もうずいぶん昔のことになる。老いてはいたが節くれたその手には思わず見惚れるくらいの力が満ちていた。何かを生み出す手だということが私にも分かった。不思議に思ったのは、その手がいつも赤く染まっていたことだ。老いた人は顔に刻まれた皺をさらに深くして笑った。「紅花だ。紅花の色が染みついたのだ」。紅花...紅花...。 口の中で何度もその花の名前を呼んだ。私は25歳だった。老いた人は私に多くの人と出会わせてくれた。紅花で染めた赤い糸を私の前に放ってくれたのだ。赤い糸を手繰り寄せるたび、迎えてくれる人たちは経験を話し知識を与えてくれた。

大きな戦争があったあの時代。この地を選んだ紅花が途絶えてし まったあの時代。種を守った「紅花の守人」の信念に私の心は震えた。

その種の子孫を私は播く。半夏に咲く一番花 いにしえ を口に含み花を摘む。古の人たちが私の周りに集っている。何も言わずただ私を見届けている。紅花の棘が手を刺す。摘んだ花びらの中に手を埋め、疼く痛みを癒す。紅花を洗うと黄みが かった花弁に赤が宿る。この赤で誰かが染め物をする。その染め物を誰かが身に着ける。古来紅花の赤はそうやって受け継がれてきた。その赤は無くてはならない赤だったから。

老いた人はもうすでにいない。私に教えようとするでもなく、ひたすら淡々と自分の仕事を していた。自分のするべきことを。

私の歳はあの老いた人の歳に近づいている。 私はあの老いた人のようになっているだろうか。握った両手をそっと開いてみる。老いた人のあの手のように、私の手は赤く染まっているだろうか。

長瀬 正美(ながせ・まさみ)

1952年山形市生まれ。地元の高校を卒業後、東京農業大学に進む。在学中、ネパール・インド・アフガニスタン等アジア各地を歩く。現在、米・野菜・紅花等を息子夫婦と家族4人で営んでいる。23年前から、地元の小学校で食育学習の手伝いをしている。

長瀬 ひろこ(ながせ・ひろこ)

横浜市出身。1949年生まれ。大学在学中に長瀬と沖縄で知り合い、山形で就農し現在に至る。

新田 克比古(にった・かつひこ)

株式会社 新田常務。1957年、米沢市生まれ。80年より天然染料研究の第一人者、吉岡常雄氏に師事。83年、新田にて紅花染と草木染に着手。92年、秋篠宮殿下および紀子妃殿下が御成りの折、新田にて紅花染を御高覧。

新田 翠(にった・みどり)

1957年、福岡県生まれ。78年より川島テキスタイルスクールにて吉岡常雄氏に師事して天然染料の染色及び染織史を学び、79年に吉岡氏の薦めを受けて吉岡工房に入る。83年に新田克比古と出会う。83年より新田にて染織に携わる。

片桐 いさ(かたぎり・いさ)

山形市の出羽地区七浦で紅花栽培を続けて60年。
いまでは珍しい素手による手摘みを続けている。

青木 正明(あおき・まさあき)

天然色工房 tezomeya 店主。1967年生まれ。大学卒業後大手アパレル企業にて企画業務 を担当。草木染め素材を利用した企画に携わる中で天然染料への造詣を深め、退社して奈良の益久染織研究所にて廣田益久氏に師事。古代染色研究家である前田雨城氏の作品に感銘を受け、古代染色研究のため独立。2002年より現職。京都光華女子大学短期大学部 准教授

大山 るり子(おおやま・るりこ)

フラワー&手づくりの店
私の部屋代表紅花染め・紅花料理インストラクター

中西 謙介(なかにし・けんすけ)

梅古庵 烏梅職人10代目。幼少から烏梅づくりの修行を始める。大学卒業後、自動車メーカーで研究開発・設計業務に携わり日本のものづくりを学ぶ。退社後、梅を含む農産品の 6次産業化に取組む。趣味はキャンプ。山をゼロから切り開き料理動画を投稿する自然系 Youtuberでもある。梅のご注文はYahooショップ梅古庵まで。
インスタグラム:@baikoan

中西 喜久(なかにし・よしひさ)

梅古庵 烏梅職人9代目 国選定保存技術『烏梅製造』保持者。1995年、国選定文化保存技術「烏梅製造」の唯一の保持者として認定された父・喜祥より烏梅作りを学ぶ。

青木 月丸 さん (青木正明さんの長男)
板垣 仁 さん (コーヒーショップ店主)
梅津 保一 さん (山形県立米沢女子短期大学 非常 勤講師)
大内 理加 さん (山形県紅花生産組合連合会 会長 )
大山 るり子 さん (紅花染め・紅花料理インストラクター)
片桐 いさ さん (ベテラン最上紅花栽培農家)
菊地 和博 さん (東北文教大学 特任教授)
小出 英詞 さん (住吉大社 権禰宜)
今野 周 さん (山形県農業総合研究センター 副所長)
岡部 信幸 さん (山形美術館 副館長兼学芸課長)
長谷川 吉茂 さん (山形銀行 代表取締役頭取)
黛 まどか さん (俳人)
紅花摘み手伝いの方々
出羽小学校の子どもたち

コメント

懐かしい風景から、この映画が始まりました。紅花の種を蒔き、育て、花を摘み、また種を採る。手から手へと託される美しい巡りに、ため息しかこぼれません。紅花を守る人々の尊い仕事に、心からの敬意を表します。

小川糸(作家)

紅花が長い歴史のなかでどれだけの人の心をあたため、暮らしに彩りを添えてくれたのか。その美しさになぜ私たちは心癒されてきたのか、紅花と人との、大きな愛の流れに触れられた気がしました。それはとてもさっぱりとした、清々しい気分でした。私もそういう流れを作るひとりになりたいです。
(朝倉あき 高畑勲監督「かぐや姫の物語」主人公・かぐや姫役の声優で参加)

朝倉あき(女優)

「おもひでぽろぽろ」から30年余。紅花と聞くと、いまだに心が騒ぎます。今井美樹さん、お元気そうですね。

鈴木敏夫(スタジオジブリ)

人々がなぜ紅花に魅了されるのか、 あの美しい紅の虜になるのか。 紅花を守り、その歴史を紡ぎ続ける方々のまっすぐな姿が それを教えてくれます。

今井美樹(歌手)

悠久からの紅花に魅了された人達が、魂を込めて取組む姿。紅花の深い色合いへの想いに等身大で重なる人達の繋がり。
そこから生まれる、その温もりと呼吸からの生き様を感じ取れて魅了される。
ドキュメンタリー映画で有りながら、繋がってる人達の奥底からの声が画面一杯に溢れたドラマに、少しずつ心動かされて感動した。

星勝(音楽家 /「おもひでぽろぽろ」音楽担当)

全世界の人に観て欲しい映画です。
ナイル川からシルクロードを伝って日本に渡ってきた紅花、今こうして私たちの手に入るまでの長い歴史、それを支えてきた人々の凄まじい努力。花に語りかける片桐いささんの言葉に出だしから涙が出る。紅花作りは演劇を作る仕事にとても似ている。
人々の一瞬の幸せのために、生涯をかけてコツコツと作業する。ただただ美しいものを手にいれるために。戦争はやめよう!
本当に美しい映画だ。

渡辺えり(劇作家・俳優)

紅花の長襦袢を惚れて、着物が好きになった35年超えています。この赤より美しい赤がないと思っている私です。しかしこれは化学染料ではなく、珍しく鮮やかなきさき染です!この映画で山形の紅花農家の生活、紅花の研究者、と素晴らしい紅花染の青木さんと新田さんに出会います。そしてかつての山形、大阪、京都と奈良の関係が紅花との関わりが明らかになります。
映画が終わりと、もっともっと見たい、着ていきたい素晴らしい染、紅花になります。

シーラ・クリフ(着物研究家)

花摘み体験をする子供たちが「痛い」と指先を引っ込める仕草に、冒頭に登場された片桐いささんの、なんてことなく花に触れる素手を思い出し、映画の中で再び驚きました。
生き物としての紅花と代々暮らしてきた人たち、紅の放つ色に魅了され新たに受け継ぐ人たち、ただ美しいだけではない、労苦を伴いながら愛でる手つきの連続に、途絶えない文化の奥底にあるものを見せてもらいました。

小森はるか(映画監督)

絶滅してゆく紅花を、人生を捧げて守ってきた人々。新たに守り始めた人々。カメラは静かに彼らを見つめる。この映画を見るまで知らなかった大事なことがたくさんある。守人たちの誠実で熱い想いが人間の文化を紡いでゆく。この貴重な記録は、いま見ておくべきだ。

手塚眞(ヴィジュアリスト)

帰るたびに変わってしまっている山形がある。けどもいつまでも変わらない山形もある。
それは誰かが一生懸命守ってくれているからなんだね。そして守ってくれる人達はみんな笑顔なんだね。

後藤ひろひと(劇作家・演出家)

知らなかった。私、山形県人なのに。紅花の深い深いものがたり。紅花が、紅花に携わる方々が、人間が、尊く、うつくしく、映っております。

白崎映美(歌手 /上々颱風)

初夏に出回る鮮やかなオレンジ色が愛しく、花屋なら誰も手にしたことがある紅花。
そんな私達が知りえなかった秘められた歴史が、紅花を愛し関わり続ける人たちの言葉から丁寧に紐解かれていました。
“紅”の色の本当の意味を知れたことは、一生の財産になりました。

前田有紀(フラワーアーティスト)

大学生の時に初めて手にした、紅花から生まれた本物の口紅の色の美しさに感動したことを、今でも鮮明に覚えています。一度見たら、脳裏に焼きつき離れない、美しい紅の色。
伝統は守ろうと思って守られるものではなく、人を惚れさせる魅力があるからこそ、試行錯誤され次世代につながる。
紅花に魅了され、恋焦がれ、人生を捧ぐ人々の素朴な言葉から、あなたは何を感じるのでしょうか。

矢島里佳(株式会社和える 代表取締役)

妖艶な紅。これほどまで人を魅了した色は他にはないのでしょう。この紅を出すためになんと長い道のりを経なければならない…。それでも、古来からの製法を残し実践している人々がいるというのは奇跡としか思えない。

平野馨生里(石徹白洋品店店主)

10年以上前、山形県河北町の紅花資料館に展示されている紅花染めの着物を見て、その鮮やかな色に心が沸き立ち、しばらく魅了されてしまったことがある。この映画は、古くからベニバナに熱烈な想いをよせる人が想像以上に多方面にいて、そのつながりによってベニバナが守り伝えられてきたことを教えてくれる。この映画がなかったら、山形の宝であるベニバナをとりまく全体像と人々の想いを知ることは永久にできなかったかもしれない。

江頭宏昌(山形大学農学部教授)

植物は美しい。人はその美しさをそばにおくために様々な苦労をする。種まき、間引き、花振り、花餅づくり。すべてを手作業で行っていく。その姿を見ると、人の営みも紅花と同じくらい美しく感じる。
紅花にはトゲがあり、収穫する時にちくっと刺してほんの少しの抵抗をする。さらに、苦労してできた染料は、日にあたっただけで落ちてしまうという。簡単にはその美しさを譲らない。人と紅花の静かな攻防に魅せられた。

鈴木純(植物観察家)

紅花は、口紅や着物、食など様々なかたちで古来女性を彩り、身体を温め、厄を払うなど重要な役割を果たしてきました。また万葉集をはじめ多くの文学のテーマとなっています。その文化を今の世に継承する人々を丁寧に取材し、紅花の力と神秘に迫る貴重なドキュメンタリー映画です。

黛まどか(俳人)